Nコラム
物流は私たちの生活に欠かすことができないインフラです。店頭で安定的にモノが買えるのは、工場で作られた商品を店まで届けてくれる物流システムがあるからこそ。しかし近年、この物流システムが危機に瀕していると言われています。この危機的状況を「物流クライシス」と呼んでいます。
物流クライシスの現状
物流クライシスは、荷物を運ぶ力が不足して物流が滞ってしまう状態のこと。ネットショッピングの普及で物流の需要が増加する一方で、トラックドライバーの不足や燃料費の高騰などで物流コストが増大。物流会社はコスト削減が求められ、ドライバーの待遇改善が遅れてしまい、さらに人手不足が深刻になるといった悪循環に陥っているのが、物流業界の現状です。
物流クライシスがもたらす影響
物流クライシスは私たちの生活に大きな影響を与えます。それは以下のような影響が考えられます。
・人手不足の物流企業が会社を存続させるために賃上げを行い、それに伴って配送料が上昇する
・ 人手不足により、配達時間が守れなかったり、再配達などの既存サービスの提供が難しくなったりする
・ 食料品や日用品、医薬品など人々が生活する上で欠かせない商品が店頭に並びにくくなる
物流クライシスはなぜ起こってしまうのか。その主な原因や課題について、ポイントを押さえながら詳しく解説をしていきます。
ネットショッピングの普及・拡大による小口配送の増加
ネットショップを利用する人口が増え、近年ではフリーマーケットなどによる個人間の売買も急速に増加しています。
・配送の集約化が困難:配送元・配送先が細分化し、小口の配送の集約化が困難
・トラック台数不足: 配送先が多岐にわたるため、トラックの台数を確保するのが難しい
・再配達対応が困難: 細分化した分、再配達の可能性も増加し、それらに対応するのが困難
ドライバー不足と労働環境の問題
物流を支えるトラックドライバーは、長時間労働や厳しい労働環境で働いています。少子高齢化の背景もあり、トラックドライバーの成り手が少なくなり、人手不足が深刻化しています。
・長時間労働: 荷物の積み下ろし作業や待機時間など、拘束時間が長く、充分な休息が取れない
・賃金水準の低さ: 長時間労働の割に賃金が低く、労働意欲の低下に繋がっている
・高齢化: ドライバーの平均年齢は高く、若年層の成り手が少ないため、人材不足に拍車をかけている
配送コストの増加と物流コストの高騰
燃料費や人件費の高騰、環境規制の強化などにより、配送コストは増加傾向にあります。
・燃料費の高騰: 原油価格の高騰は、物流コスト全体を押し上げる要因となる
・人件費の高騰: ドライバー不足を背景に、人件費も上昇傾向にある
・環境規制の強化: 排ガス規制に対応した車両の導入など、環境対策にかかるコストも増加している
2024年問題の影響
2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働に対する上限規制(960時間/年)が適用されたことで発生した諸問題を指します。
・トラックドライバーの離職加速: この規制はもともとドライバーの労働環境を改善する目的だったが、
時間外労働で低賃金をカバーしていたため、規制が裏目に出てトラックドライバーの離職を加速させた
深刻化する物流クライシスですが、このままでは私たちの生活に悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、物流業界全体で危機感を共有し、課題解決に向けた取り組みを進めていく必要があります。物流クライシスを乗り越えるためには、どのような解決策が考えられるでしょうか。
効率化と物流DXの推進
物流クライシスの根本的な要因は人手不足です。これから先、トラックドライバーのみならず、日本国内全体が少子高齢化によって人手不足が課題になってくるでしょう。そのため、バックオフィスでも倉庫管理システム(WMS)や受注管理システム(OMS)などを導入することで、IT化を進め、業務効率化を図ることが重要です。
トラックドライバーの労働環境改善と企業のイメージアップ
賃金アップや労働時間短縮などの待遇改善、休日の取得促進や柔軟な働き方といった「働き方改革」を進め、トラックドライバーの離職を食い止める必要があります。同時にどうすればトラックドライバーになってもらえるかを考えることも重要。自動運転機能が使えるトラックの導入やドローン配送の可能性も視野に入れると良いでしょう。先進的な技術を導入している物流会社であれば、競合他社と差別化でき、注目度も向上するはず。また、女性ドライバーの育成、外国人労働者の採用など、多様な人材が活躍できる環境づくりも大切です。
企業と消費者の協力体制の構築
物流クライシスはもはや物流会社単体で解決できる範囲を超えています。そのため、物流会社だけでなく、メーカーや小売店など、サプライチェーン全体で協力して効率化やコスト削減に取り組む体制構築が求められます。送料値上げへの理解や再配達の削減など、消費者への理解と協力をお願いすることも、今後必要不可欠な活動になってくるでしょう。
物流クライシスは私たちの生活を脅かす大きな問題であることに間違いありません。この課題をどこかで解決しなければ、今度訪れるさらなる少子高齢化社会に適応することはできません。物流クライシスを解決し、持続可能な物流システムを構築することで、物流の新しい未来を切り拓くことができるはずです。ここではその可能性について模索していきます。
環境負荷低減に関する取り組み
いまや環境面での配慮は、どの業界も必須です。物流業界でいえば、Co2排出量や梱包資材の低減が環境負荷を抑制するための取り組みとなります。Co2排出量低減については、電気自動車や燃料電池車などの導入、モーダルシフト、グリーン物流など、梱包資材低減については、リサイクル可能な梱包資材の採用や仕組みづくりが求められます。環境負荷低減に関する取り組みは、人手不足や待遇改善とともに、今後の物流業界を存続させるために重要な取り組みです。
政策改革による物流クライシスの解決
物流クライシスは日本の物流業界を揺るがす大きな課題であるため、日本政府も物流クライシスを解決するためにさまざまな対策を行っています。物流業界に従事する人々の労働環境を改善するため、厚生労働省も改善告知基準を見直すなど、具体的な取り組みを開始しています。2024年問題のような本質を理解していない施策ではなく、抜本的な物流改革の実施を期待せずにはいられません。
物流業界の持続可能な発展に向けて
物流クライシスは物流のサプライチェーン全体で力を合わせて取り組むべき課題です。そのため、人手不足や待遇改善、新規人材採用を募る仕組み、DXによる業務効率化や労働環境の改善、環境への配慮など、全方位からバランスの良い改善活動をしなければなりません。これにより、持続可能な物流システムを構築していくことが、日本の物流業界、ひいては私たちの未来を創造することにつながっていきます。
物流クライシスは、私たちの生活や経済活動に大きな影響を与える深刻な問題です。しかし見方を変えれば、今後、さらに深刻化する少子高齢化社会の到来を見据え、今後の持続可能な物流システムを構築できるまたとないチャンスとも言えます。いま、そしてこれからの時代に求められる物流の形とは何か? 現在の物流業界を見直すことで、そのヒントが見えてきます。そのヒントを元に課題解決を図ることが、日本の新たな物流システムの構築につながるはずです。
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