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物流現場の“困った”を解決!物流DXでできること・できないこととは

更新日:2025/06/17

仕事量の増加、人手不足、人的ミス、把握しきれない在庫など、物流の現場では課題が山積しています。そんな課題を解決する手段として注目されるのが「物流DX」です。本記事では、物流DXでできることとできないことを整理し、現場で役立つ実践的なヒントを紹介します。

物流DXとは?その概要と重要性を分かりやすく解説

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物流DXとは?

物流DXとは物流における「Digital Transformation|デジタルトランスフォーメーション」のことを指し、日本語で言えば「物流のデジタル変革」を意味します。物流DXは「デジタル」という言葉が含まれているため、IoTやペーパーレス化を導入する「デジタル化」と混同しがちです。しかし、正しい意味は「既存の価値観や仕組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの」であり、デジタル化はその一手段にすぎません。

 

トラック輸送がピンチ!?

国内の貨物輸送量と輸送需要の観点から見ると、トラック輸送が9割以上を占めています。物流の手段は船舶、航空機、貨物列車などが挙げられますが、最終配送先はトラック輸送になることからも、物流業界はトラック輸送で成り立っていると言っても過言ではありません。

そんなトラック輸送の業界がいまピンチに立たされています。その大きな理由に人手不足、物流の2024年問題、EC市場の活発化が挙げられます。

 

人手不足

トラックドライバーは、労働環境(労働時間、業務負荷など)から人材確保が難しく、全産業に対して平均年齢も3~6歳程度高くなっています。また、トラックドライバーの年収は、全産業の平均に対し、5%~10%程度低い状況も人手不足の原因になっています。

 

物流の2024年問題

トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均に対して2割程度長いことから、労働環境を改善する必要があると考え、国は2024年度からトラックドライバーに時間外労働の上限(休日を除く年960時間)規制を適用しました。これにより、長距離運送における輸送手段の確保が難しくなるケースが増加。たとえば従来、四国から九州の片道約700キロを1日で運べていましたが、規制によりそれができなくなります。片道2日かかることになれば、それだけ車両の回転率が下がり、1台当たりの売り上げも減少するため、トラックドライバーの手取りにも影響することになります。

 

EC市場活発化

ECサイト市場規模(BtoC)は2013年の約11兆円から2022年には約22兆円と倍増し、今後もその勢いは止まることはないでしょう。その上で、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう外出自粛要請から、小口の多頻度化が急速に進行。それによって再配達率も上がるため、配送の効率が下がっているのが現状です。

 

【参考】

経済産業省資料「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」

経済産業省「電子商取引実態調査」

 

 

 

物流現場でよくある“困った”とは?

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物流業務の現場では、トラックドライバーだけでなく、倉庫で働く人材も不足しています。多くの課題を抱える物流業界で主な課題をピックアップしてみました。あなたの会社でも以下のような困りごとを抱えていませんか?

 

人手不足で作業が回らない

全日本トラック協会の「第129回トラック運送業界の景況感(速報)2025年1月~3月期」によると、燃料の高騰や人手不足などにより、物流現場での人手不足は慢性化しており、いまだ解決の兆しが見えないようです。小口配送や再配達の増加によって、配送効率が下がっていることも大きな原因となっています。

【出典】全日本トラック協会「第129回トラック業界の景況感(速報)」

 

作業ミス・ヒューマンエラーが多い

物流業界の人的ミスは、倉庫におけるピッキングミスや配送先を間違いによる誤出荷などが挙げられます。このようなミスはクレームにつながり、多発すると企業へのイメージダウンになりかねません。

 

在庫状況や進捗が見えない

在庫数や在庫の動きについて正確に把握することは、企業のサービスや商品の質向上に大きく関わってきます。在庫の「見える化」ができないと在庫切れや過剰在庫を引き起こし、在庫数が安定しないことから、倉庫スペースを無駄に取ってしまう可能性もあります。

 

古い設備のままで効率が悪い

倉庫内の設備は大掛かりなものが多く、導入に大きなコストがかかる場合があるため、なかなか更新できないのが現状です。しかし、現代のようなスピード社会においては、古い設備のままでは使いにくく、出入庫などの対応が遅れてしまうことも多々あります。設備を根本から見直し、現代のスピード感にあった設備導入が求められます。

 

 

 

物流DXでできること:物流業務の効率化と最適化

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DXは前段で示したような物流業界の課題を解決するために一役買ってくれます。具体的にどのように解決できるのでしょうか?

 

自動倉庫や仕分けロボットなどの機械化による省人化

人手不足に最も効果を発揮するのは、自動倉庫や仕分けロボットなどを導入することです。自動倉庫では決められた業務であれば人の1000倍、仕分けロボットでは人の3~4倍の作業効率を持つとも言われます。自動倉庫は大量の少品種を扱うBtoBに向いており、反対に仕分けロボットは多品種小ロットの商材を扱うBtoCのような業態に向いています。人の代わりに商品のある場所に行き、商品をピックアップし、梱包エリアまで運ぶという作業をすべて機械がしてくれるわけですから、大幅な省人化になります。しかもこれらの作業を機械が行うことで、人的ミスも削減でき、24時間稼働による作業の効率化にもつながります。

WMS(倉庫管理システム)やハンディ端末を活用した作業のミス削減・効率化

WMSは倉庫内の在庫や入出荷の情報を一元的に管理できるため、入庫管理、在庫管理、ピッキング指示などを自動化できます。また、ハンディ端末を同時に活用すれば、複雑な情報を一瞬で読み取ることができ、物流の川上から川下まで電子データでやりとりすることができるため、紙の伝票も必要ありません。手書きや目視による読み取りミスがなくなるため、人的ミスが削減でき、作業も各段に早くなります。このようなシステムはBtoCの業態に向いていると言えます。

 

 

 

配送ルートの最適化

配送ルートを作成するためには、荷主や納品先からのニーズを応えながら、できる限りコストや時間を抑えたルートを導き出す必要があります。もちろんドライバーの安全確保も大前提として考慮しなければなりません。

配送ルートを作成する際は、配送先の住所、納品時間だけでなく、荷姿、保管方法、トラックの積載容量、ドライバーの勤務時間、配送件数、さらには道路の混雑状況による時間の消費など、膨大な条件があるため、経験と熟練したスキルを持つ人しか最適なルートを作成できない傾向にあります。

そこで活躍するのがAIによるルート作成です。AIにこのような膨大な条件を入力すると、コンピューターがそれらの条件を考慮した最適なルートをはじき出してくれます。これにより、配送ルートを作成する時間やドライバーの長時間労働の抑制、人件費、燃料費、車両費の削減にも貢献できます。商品数や配送先を多く持っているほど、この効果を実感できるはずです。

データによる在庫・需要の可視化と最適化

AIに年間の在庫の動きなどを入力すると在庫の管理だけでなく、需要の予測も分析してくれます。これには数年分の在庫状況データが必要になりますが、その年数が多くなればなるほど、需要予測の正確性が増します。正確な需要予測ができれば、限られた倉庫内のスペース配分や繁忙期の予測も可視化できるため、アルバイトやパートなどをどれだけ雇えばいいのかも事前に分かります。

 

 

物流DXでできないこと:課題と限界

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物流業界におけるDXは多くの課題を解決してくれますが、DXは万能ではありません。DXが解決できないものもあることを理解しておきましょう。

現場の物理的な制約

DXはデジタルによる変革ですから、倉庫スペースの創出や人力が必要な作業を手伝ってくれるわけではありません。物理的な制約はどうしても解決できないため、DX導入前にしっかりと把握しておく必要があります。

 

教育・現場理解の不足による定着の難しさ

DXを推進しようとしても、現場や取引先から理解が得られないことがあります。特に現場は従来から行ってきた作業を大きく変えられるわけですから、抵抗したくなる気持ちも分かります。DXを導入する前から、DXを導入したら現場の仕事はどのように楽になるのかをしっかりレクチャーする必要があります。仕事のやり方が大きく変わりますが、その先には現場に大きなメリットをもたらすことを理解してもらいましょう。

 

全業務の完全自動化は困難

物流業務は商品の入庫から保管、管理、検品、出庫、配送といった一連の流れを経て、配送先まで商品が届けられますが、すべての工程やすべての業務を完全に自動化するのは、現段階では難しいです。DXと聞くと何でも人の代わりに機械やAIがやってくれると思いがちですが、そうではありません。まずは小さなところから変革していくことが大切です。

 

自社のみがDXを推進しても解決しない場合もある

どのような仕事でも同じですが、会社が単独で機能していることはほぼありません。他企業との連携で仕事が成り立っていることがほとんどであるため、自社だけがどんどんとDXを推進していっても、孤立してしまう可能性があります。自社は完全にペーパーレスで電子データのみの扱いなのに対し、取引先は従来のような紙伝票で管理していては、DXの意味がないからです。取引先などと足並みを揃えるため、DXを推進していく場合は事前に関係各社に相談することをお薦めします。

 

 

DXは導入すれば、勝手に業務を効率化してくれると思いがちですが、導入前にも導入後にもしっかりとした準備が必要であり、万能ではないことを理解しておくことが大切です。特に4つめの項目は自社のみではなく、DXの推進において関係各社との足並みを揃える視点が重要。視野を広く持ち、確実なDXを進めていきましょう。

 

 

 

設備導入のハードルを下げる「リース/レンタル」という選択肢

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物流DXが現在、物流業界が抱えているさまざまな課題を解決してくれる大きなポイントになることは理解できたと思います。しかし、現実に目を向けると、導入には大きな初期投資が必要であり、中小企業にとってはDXの導入に二の足を踏んでしまうことも理解できます。

 

そこで目を付けたいのが「リース」という手段です。DXに必要なすべてのシステムを自前で購入するよりも、リースを活用すれば、購入するよりも初期投資を抑えることができます。昨今ではリースのサービスも向上しており、DX導入前の相談や導入ステップ、導入後の運用支援までトータルでバックアップしてくれるリース会社が増えています。事前に短期間の運用テストをしてくれるところもあり、安心・確実な導入が見込めます。また、DXの分野は日進月歩であるため、最新の機器が必要なタイミングで入手できるメリットも大きいです。

 

日建リース工業は、幅広い物流機器を販売・レンタル(リース)している会社です。人手不足や作業効率を大幅に改善させるIT商品や物流DX、仕組みづくりなどをトータルにカバー。物流分野全般をハード面、ソフト面の両方からサポートします。見積依頼も無料なので気軽に問い合わせてください。

 

 

まとめ:物流現場の“困った”には、DXと選択肢の柔軟さが効く

新型コロナウイルス感染症の影響で加速したECサイト市場の繁栄は、今後も衰えることはないでしょう。それにともない、物流業界の人手不足を筆頭とする各種課題も簡単に解決できるわけではありません。そうなるとDXの推進は今後、物流会社において必須の選択肢となるのは目に見えています。

 

しかし「物流DXが自社を救ってくれる!」と盲目的に飛びつくのは危険です。導入前や導入後に安定して継続した運用をするためには、何が必要なのかを見極める必要があります。DXは万能ではないこと、導入は段階的に行うことが現実的であること、そしてリースやレンタルを活用し、柔軟な手段で導入のハードルを下げることが、課題解決に効くことを覚えておきましょう。

 

物流DXの推進を後押しするさまざまな機器を販売・レンタルしています

幅広い物流機器を販売・レンタル(リース)している日建リース工業。必要なものを、必要なときに、必要な数だけ。全国130箇所に広がるネットワークで物流現場をサポートします。人手不足や作業効率を大幅に改善させるマテハン機器だけでなく、DXによる物流システム、仕組みづくりといったソフト面もトータルにカバーします。DX推進の専任スタッフも在籍していますので、ご相談や見積依頼も無料なので気軽に問い合わせてください。

よくある質問

物流DXとは?
物流における「Digital Transformation|デジタルトランスフォーメーション」のことを指し、日本語で言えば「物流のデジタル変革」を意味します。物流DXは「デジタル」という言葉が含まれているため、IoTやペーパーレス化を導入する「デジタル化」と混同しがちですが、正しい意味は「既存の価値観や仕組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの」であり、デジタル化はその一手段にすぎません。
物流DXは何から手をつけると良い?
まずは現場の課題を整理するのが先決です。効率化したい業務や解消したい困りごとを明確化。優先順位を付けて段階的に取り組むのがいいでしょう。
物流DX導入時の注意点は?
DXは困りごとを何でも解決してくれる“魔法”ではありません。導入前に現場の方々へ業務がどのように変わるのかをしっかりと説明し、DXの効果が最大限発揮できるような教育を施しておくことが重要です。このような教育面や物理的なスペースの問題などは事前に解決しておくべきことです。初期費用もまとまった金額になるため、リースなどを活用し、費用を抑える方法もあります。
物流DXで期待できる効果は?
物流業界は慢性的な人手不足に陥っており、今度もそれが劇的に解消する兆しはありません。物流におけるDXは業務の効率化を図り、省人化、人的ミスの削減、在庫可視化、環境負荷低減など、多くの効果が期待できます。自社の業務の特性を理解し、どのような方法でDXを推進していくのか。しっかりと事前準備をしてから導入に踏み切りましょう。
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