Nコラム
物流業界においてパレットサイズの選定は、輸送効率や保管効率に大きな影響を与えます。最も大きな影響は、荷物とパレットサイズの不一致による無駄。パレットが荷物より大きすぎるとスペースが余ってしまい、トラックや倉庫内にデッドスペースが発生してしまいます。逆に小さすぎると、荷物がはみ出して積載できなかったり、荷崩れのリスクが高まったりします。そのためパレットサイズを標準化・最適化することで、トラックやコンテナ内の積載率を高めることができ、同じ輸送回数でより多くの荷物を運ぶことができるのです。その結果、輸送コストを削減できるだけでなく、CO₂排出削減といった環境面でのメリットも得られます。
さらにパレットサイズに最適化は、作業負荷や保管にも影響します。現場で扱いやすいサイズのパレットを選ぶことで、フォークリフトやハンドリフトでの移動が容易になり、作業負荷を軽減できます。倉庫内の棚や自動倉庫とサイズが合致すれば、保管効率も向上し、在庫管理がスムーズに行えます。パレットが最適なサイズでなければ、無理な作業や不安定な保管を強いられ、事故や労務リスクを高める可能性があります。
寸法 (mm) |
呼称 | 主な用途・業界 |
---|---|---|
1,100 × 1,100 | JIS標準パレット(通称:一貫パレット、通いパレット) | 日本国内で最も普及している標準サイズ。多業種(食品、飲料、日用品、化学、流通小売など)で広く利用。国内輸送・倉庫保管の基本規格。 |
1,100 × 1,400 | 細長型(ロングサイズ) | 飲料や段ボール、紙製品など縦長の荷姿に対応。主に陸運会社や飲料業界で使用。 |
1,200 × 1,000 | 欧州標準サイズ(ユーロパレット互換) | 欧州からの輸出入貨物や外資系物流、製薬・化学メーカーなど国際規格を意識する業界で使用。 |
1,200 × 800 | ユーロパレット(EPAL規格) | 国際物流(特に欧州系企業)で採用されることが多いサイズ。 |
1,100 × 800 | 小型規格パレット | コンビニ配送、食品スーパー向け物流などに使用。小口配送やカゴ車代替として利用。 |
1,200 × 1,200 | 大型パレット | 化学・製鉄・大判資材など、重量物や大型製品の輸送に利用。 |
1,100 × 900 | 半規格(中型サイズ) | 飲料ケースや日用品など一部の業界で使用。 |
1,400 × 1,400 | 特大パレット | 大型機械部品、鋼材、木材、建材業界などで使用。 |
国内で流通しているパレットサイズを表で示しました。国内物流の主流サイズは「1,100 × 1,100mm」。JIS規格で、多くの倉庫やトラックの設計はこのサイズを基準にしています。国際物流では「1,200 × 1,000mm」や「1,200 × 800mm」が使われ、輸出入貨物の標準サイズです。業界特化型(飲料・食品・建材など)では、扱う荷姿や製品に合わせて「1,100 × 1,400mm」や「1,400 × 1,400mm」といった特殊サイズも使用されます。また、パレットにはフォークリフトで運ぶ際にフォークを差し込める穴があり、パレットの「2方向(前後)」からしかフォークを差し込めない構造のものは「二方差し」、パレットの「4方向(前後左右)」からフォークを差し込める構造のものを「四方差し」と呼んでいます。
業界によって使われているパレットサイズが異なりますが、なぜそのようなサイズになったのか。その理由や背景を説明していきます。
酒類業界(1,100mm × 1,100mm など、瓶やケース対応)
酒類業界では、瓶ビールや清涼飲料などをケース単位で扱うため、正方形の配置で安定的に積載できることが重要。トラックや倉庫もこのサイズを基準に設計されており、配送網全体で共通化しています。
食品業界(1,100mm × 1,100mm、1,200mm × 1,000mm、衛生面の配慮や冷凍/冷蔵対応)
コンビニやスーパー向けの配送は、多頻度・小口輸送が多く、扱いやすいサイズが求められます。特に冷凍・冷蔵倉庫は庫内の通路幅やラックの仕様に合わせ、標準パレットサイズに準拠しているものが多いです。また、食品は衛生面が厳格に求められるため、プラスチックパレットが主流。洗浄・殺菌が可能で異物混入リスクを下げることができます。
医薬品業界(1,100mm × 1,100mm を基盤に厳格管理、清潔性・トレーサビリティを重視)
医薬品は高付加価値・高リスクのため、サイズや数量において厳格な管理が求められるのが特徴。保管・輸送においては、清潔性(滅菌対応の樹脂製パレット) が必須です。薬事法や GDP(Good Distribution Practice)の規制があり、パレット単位でのトレーサビリティ管理が行われています。
化学業界(1,100mm × 1,100mm、1,200mm × 1,200mm、耐薬性、安定性、強度重視の金属製パレットや特殊樹脂製パレットを使用)
ドラム缶や薬液容器など、重量物や液体容器の安定積載を前提にしたサイズが選ばれます。薬品による腐食リスクがあるため、耐薬性に優れた樹脂パレットや金属パレットが採用されることが多く、倒壊や漏洩のリスクを避けるため、強度と安定性を重視した正方形の大型パレットが用いられます。
自動車業界(1,200mm × 1,200mm、1,400mm × 1,100mm、大型部品などの重量に対応する特殊なサイズを使用)
エンジン、ドア、バンパーなど、大型で重量のある部品を輸送するため、規格外のパレットが多数存在します。スチールパレットや部品専用につくられた治具付きパレットがあり、部品形状に合わせた専用設計が多いです。海外工場との輸送では ISO コンテナ規格(1,200mm × 1,000mm 系列)との整合も図られています。
日本と海外で使われているパレットサイズの違い、およびそれにより生じるトラブルについて解説します。
区分 | 主なサイズ(mm) | 主な利用範囲・背景 | 特徴 |
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国内標準サイズ | 1,100 × 1,100 (JIS規格) |
日本国内の物流・倉庫・トラック輸送 | 国内トラック荷台や倉庫ラックの寸法に最適化。「一貫パレット」とも呼ばれ、食品・日用品・飲料など幅広い業界で使用。日本独自規格のため、国際輸送では不利です。 |
国際標準サイズ | 1,200 × 1,000 (ISO・北米・アジア規格) 1,200 × 800 (ユーロパレット/EPAL規格) |
海外輸送、国際物流、外資系企業 | 海上コンテナや欧州トラックサイズに合わせた規格。欧州・北米では流通の標準で、日本でも輸出入貨物や製薬・化学業界で採用されています。 |
国内標準サイズと国際標準サイズによる違いで生じるトラブルで挙げられるのは、コンテナ積載効率の低下です。国内規格(1,100mm × 1,100mm)は海上コンテナ内にきれいに並べることができず、デッドスペースが生じます。フォークリフトやラックとの不適合も生じます。国内倉庫は 1,100mm × 1,100mm に合わせたラック設計が多く、国際規格パレットを使うと棚からはみ出したり、不安定になったりすることがあります。
一方、輸出先では 1,200mm × 1,000mm を前提とした搬送機器が多く、国内規格だと取り扱いがしづらくなります。他にも、輸出入時に国内標準サイズから国際標準サイズのパレットに積み替える際のコストや、再梱包の手間も発生。サイズ違いによる輸送中の荷崩れのリスクも軽視できません。
パレットのサイズ最適化だけでなく、実際に導入する際に考慮したい要素がいくつかあります。サイズ以外にも考えなければならない内容とは何でしょうか?
素材
パレットには木製、プラスチック製、金属製、紙製とさまざまな素材でつくられています。木製は安価で入手性が高く、修理もしやすいのが特徴。プラスチック製は軽量で清掃が容易であること。耐水性、衛生性に優れ、寸法精度も高いです。金属製は頑丈で高耐久性がポイント。紙製は軽量で使い捨て可能な点がメリットとなります。
使用頻度や繰り返し使用の可否
パレットの使用頻度についても考慮すべきです。輸出や納品後にパレットを回収しない場合は、コストの安い紙製、木製パレットの使用がベストです。一方、循環型物流や社内で専用利用する際は、プラスチック製や金属製が向いています。
耐荷重、衛生性、保管時のスタッキング性
機械部品などの重量物を扱う際は、金属製のパレットが最適です。食品や医薬品の場合は、衛生性が重視されるため、洗浄可能なプラスチック製が必須です。保管効率を高める場合は、倉庫スペースを効率化するため、スタッキングが可能な構造のパレットを選びましょう。樹脂製は積み重ね設計のバリエーションが豊富。金属製は強度面でスタッキング性に優れるが重量が課題となります。
パレットのサイズを最適化することは、フォークリフトや搬送機器で扱いやすく、荷役作業の負担を軽減。作業効率の向上や省人化につながります。同時にトラックの荷台も無駄なく活用でき、輸送回数を削減。輸送コスト削減やCO₂排出削減も期待できます。また、倉庫のラックや自動倉庫の寸法に合わせたパレットサイズを採用することで、保管スペースを最大限に活用。在庫管理の効率化と保管コスト削減も実現できます。
パレットサイズの最適化は多くのメリットがあります。パレットの更新時などにあらためてサイズを見直してみてはいかがでしょうか?
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