N-コラム

高齢者が抱える介護問題とは?
介護者の人材不足や家族の負担、サービスなどを解説

更新日:2023/04/26

高齢者の人口増加とともに、介護保険制度における「要介護」または
「要支援」の認定を受けた人は増加の一途をたどっています。
その影響から日本は介護について解決しなければならないさまざまな課題に直面しています。
ここでは介護問題をキーワードに介護の現状や背景、解決方法、
将来の備えなどについて解説していきます。

介護問題の背景と現状

 

介護問題イメージ

日本における総人口に占める高齢者(65歳以上と定義)人口の割合は、1950年(4.9%)以降、年々増加しており、1985年には10%、2005年には20%を超え、2018年には28.1%となりました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると見込まれています。高齢化の理由については生活環境の改善、食生活・栄養状態の改善、医療技術の進歩などが挙げられます。

このように高齢者率が増加する一方、出生率は年々減少しており、2021年の出生数は前年より2万9,231人少ない81万1,604人で、1899年の調査開始以来過去最少を記録。現状でも少子化によって介護業界での働き手が少ない状況が、今後さらに加速するのは間違いありません。

 

高齢者人口と割合の推移

 

出生率の推移

 

高齢社会で抱える介護問題

高齢社会で抱える介護問題

 

少子高齢化が進む現代の日本社会において、どのような介護問題が浮上しているのでしょうか。それぞれの介護問題について詳しく解説していきます。

 

・介護業界の人手不足

少子高齢化によって現役世代が少なくなるということは、介護業界にも働き手が少なくなるということ。介護施設では半分以上の事業所で従業員不足を実感しているといわれています。そのため、介護職の有効求人倍率は全職業に比べ高い水準にあります。

介護職員が不足している理由は、他の業界に比べて労働条件などが良くないことが最も顕著で、同業他社との人材獲得競争が厳しいことも理由に挙げられています。ちなみに介護職員の離職率は 14.9%(2019年10 月1 日~2020年9月30日までの1年間において)で、平成 17 年度以降最低の離職率となっています。

 

・介護難民

介護難民とは、施設などで介護サービスを受けることができずに困っている人のことを指します。家族など在宅で介護をする人がいないだけではなく、病院や介護施設でも受け入れてもらえないのが原因です。介護難民になると、要介護者の家族や親族(特に若年者)が仕事を休職もしくは退職し、介護に専念せざるを得ない状態(介護離職)になり、家族全体が経済的に困窮することになります。

 

・老老介護、認認介護

老老介護とは、高齢者の介護を高齢者が行うことを指します。若い家族が身近にいない、施設に入居する資金がないなど、さまざまな事情で老老介護を行っている世帯が増えています。

老老介護と同様に認認介護も問題視されています。認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状態を指します。認認介護は、認知症高齢者の増加に伴い、老老介護が深刻化した状況と考えていいでしょう。2019年の「国民生活基礎調査(厚生労働省)」では、介護が必要となった主要な原因で最も多かったのは「認知症」と発表しています。認知症高齢者の介護には専門的な知識やスキルが必要であり、認知症の症状に合わせた対応が求められるため、介護者の負担やストレスが大きく、介護者自身の健康管理やサポートが必要不可欠です。

 

・高齢者虐待

近年、増えてきたのが高齢者への虐待です。特に介護施設の職員による虐待件数は年々増加しており、身体的な虐待、ネグレクト(介護放棄による虐待)、心理的虐待など、さまざまな虐待の事例が報告されています。このような現状を受け、2006年には高齢者虐待防止に関する法令「高齢者虐待防止法」が制定されましたが、介護施設内で起こる虐待はなかなか発見しづらく、問題が表面化するのはごく一部だと言われています。

 

・高齢者の一人暮らし

少子化や核家族化の影響で、一人暮らしの高齢者が増加しています。以前は近所づきあいや寄り合いなど、地域のコミュニティによる活動が行われていましたが、現代ではこのようなつながりが薄れつつあり、家族であっても関係性が希薄になっているケースが増えています。高齢者の一人暮らしは、突発的なケガや病気による孤独死を引き起こす可能性があり、実際に高齢者の孤独死の数も増加傾向にあります。

 

・成年後見人のトラブル

成年後見人とは、認知症などの理由で判断能力が不充分な高齢者に代わり、不動産や預貯金の財産管理、介護サービスの利用や施設への入所契約などを行う人のこと。高齢者にはありがたい存在ですが、成年後見人に関するトラブルも増加しています。最も多いのは、高齢者の財産などの不正流用。このようなトラブルを引き起こす原因としては「成年後見人の権限が必要以上に大きすぎること」や「親族後見人などの理解不足・知識不足」といわれています。

介護問題の解決策

介護問題の解決策

 

上記で紹介したさまざまな介護問題はどのように解決すればいいのでしょうか? その解決策や対策のポイントを紹介していきます。

 

・介護業界の人手不足

介護業界での働き手が少ないのは、仕事内容に対して社会的評価が低いことが原因に挙げられます。その対策としては、介護事業者が働きやすい労働環境を整えることが最も重要だと考えます。ITの導入による仕事の効率化、ユニットケア(利用者10名程度を1ユニットとして同じメンバーで生活をし、決まったスタッフがケアにあたる介護方法)の導入、外国人介護人材の受け入れなど、人材確保のための施策は数多くあります。事業所の規模、予算などに合わせて最適な方法を選択するのがよいでしょう。

 

・介護難民

高齢者が増えるに従って、介護難民も増えていくのは容易に予想がつきます。介護難民にならないためには、事前に介護に関する情報収集をすることが大切。介護が必要になった場合の支援制度や公的な介護支援サービスの内容などを事前に把握しておきましょう。国が打ち出した「地域包括ケアシステム」を利用するのもおすすめです。地域包括ケアシステムは、地域の支援サービスが一丸となって高齢者をケアする仕組み。自宅にいながら安心して介護支援を受けることができます。詳しい情報は、地方自治体の地域包括支援センターに聞いてみましょう。

 

・老老介護、認認介護

老老介護や認認介護の対策は、介護が必要な状態にならないように認知機能や運動機能を保つトレーニングを日々継続して行うこと。病気になって介護負担が大きくなってしまう前に定期的な健康診断を行い、病気などの早期発見に努めることが重要です。すでに介護が必要となっている場合は、地域包括支援センターに相談してみましょう。地域包括支援センターは、誰でも介護の専門家に直接相談することができ、利用できる介護制度やサービスについて教えてもらうことができます。

 

・高齢者虐待

高齢者虐待を引き起こす最も大きな原因は、介護職員のストレスといわれています。仕事やプライベートの悩みを抱え、誰にも相談できないままストレスが溜まり、その結果虐待に手を染めてしまうというケースがほとんどです。そのため、職員が日頃の悩みなどを相談できるような雰囲気や機会をつくることが有効な対策です。

 

・高齢者の一人暮らし

家族ができるいちばんの解決策は「一緒に暮らすこと」です。それができない場合は、介護施設や訪問介護などのサービスを活用し、介護の専門家に毎日もしくは定期的に高齢者と接触する機会を設けることが重要です。元気に動ける高齢者であれば、シルバー人材センターなどに登録して就業機会をつくったり、サークルやボランティア活動などに参加したりすることで、社会的な接点を増やすことも効果的です。

 

・成年後見人のトラブル

高齢社会の日本においては、成年後見人を必要とする高齢者や成年後見人になる現役世代は確実に増えていくと考えられます。そのため、トラブルを未然に防ぐためには、成年後見人になるための研修を受けて知識を蓄えたり、必要なときにいつでも相談できる窓口を開設したりするなど、行政がバックアップしていくことが重要。成年後見人への支援体制強化がトラブル防止に役立つはずです。

知識を身につけることも対策

介護問題は上記に挙げた例以外もまだまだあります。いつ自分がその問題に直面してもいいように、家族で介護について話し合ったり、知識を身に付けたりすることが対策(予防)にもなります。インターネットには介護情報を掲載しているサイトが数多くあるので、参考にしてみましょう。自治体などで開催される介護教室に参加してみるのもいいですね。知識を付けたり、介護について体験するだけでも、いざというときの心構えができますよ!

まとめ:介護が始まる前に準備や対策を

介護問題における大きなポイントは「終わりが決まっていないこと」。人によっては10年、20年と続く場合もあります。そのため、最も重視してほしいのが介護される人以上に介護する側の健康です。介護者が心身ともに健康でなければ、よい介護はできません。介護はときに重労働を強いられることがあります。いかに楽に介護ができるか。その環境を整えることは、特に介護事業者にとって大きな課題になるでしょう。

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よくある質問

介護問題の背景にはどんなことがある?
介護問題の背景にあるのは、少子高齢化です。医療技術の進歩により、人が長生きできるようになる一方で、晩婚化などの影響で出生率が低下。日本の総人口に対し、高齢者が増え、若年者が減る状況に陥っています。これにより、高齢者を介護する人材が不足し、さまざまな問題を引き起こしています。
介護が抱える問題は何がある?
介護業界で働く人が不足する問題、老老介護(認認介護)、高齢者虐待など、さまざまな課題が浮き彫りになっています。
介護問題の解決策は?
介護問題の多くは、介護業界のイメージを向上させ、働き手を呼び込み、労働環境を充実させることで解決できる可能性があります。しかし、この解決方法は行政や法整備など、国や自治体が動かなければ難しいでしょう。
今からできる準備や対策は?
介護は多くの家族にとっていずれやってくる問題です。そのため「介護しなきゃいけなくなってからでいいだろう」ではなく、いまからインターネットで調べたり、自治体に問い合わせたりして介護の情報を収集したり、家族で話し合っておくのがおすすめです。事前に知識を蓄え、気持ちの準備をしておけば、いざというときに慌てることが少なくなります。
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