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【ケアマネジャー必見】歩行器の種類と選び方ガイド!
介護現場での活用ポイントをわかりやすく紹介

「歩行器」は、歩行に不安を感じる高齢者などの転倒予防やQOL向上のために非常に有効な福祉用具です。歩行器はその種類や使用環境によって選び方が変わるため、正しい知識が必要です。本記事では歩行器の種類、選び方、制度活用などをわかりやすく紹介。ケアマネジャーや介護職に就いている方は、介護現場や在宅で介護をしたいと思っている方への提案時に役立つはずです。

 

歩行器とは? 基本的な特徴と役割

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歩行器は歩行に不安を感じ、転倒するリスクのある高齢者などの歩く動作を助ける福祉用具です。歩行器を使うことで、安定した歩行が可能になり、転倒防止、QOLの向上に役立ちます。また、歩行器によって歩きやすくなるため、歩くことへの抵抗感が軽減され、筋力低下の防止や歩くことに自信をつける精神的な効果も期待できます。

 

歩行を補助する福祉用具は「歩行器(車輪のない歩行器)」、「歩行車(車輪のある歩行器)」に大別できます。車輪のない歩行器は主に屋内向けで、その特徴から「固定型歩行器」とも呼ばれます。歩行杖ではバランスが取りにくい方に向いている歩行器です。歩行車は車輪やキャスター、ブレーキが付いているものを指し、歩行車の前脚部分に車輪やキャスターが付いたものを「前輪歩行車」、歩行車の4本脚すべてに車輪やキャスターが付いたものを「四輪歩行車」といいます。歩行車は屋内用と屋外用があり、屋外用は障害物を乗り越えやすいように大きな車輪がついていることから、利用者がバランスを崩さないような工夫がされています。

 

次の項目では歩行杖や歩行器、歩行車の種類や特徴について詳しく解説していきます。

 

歩行器の種類と特徴を徹底解説

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歩行器にはさまざまな種類や特徴がありますが、ここではそれらについてより詳しく解説していきます。

 

■歩行器(固定型歩行器)

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固定型歩行器は持ち上げ式、ピックアップ式とも呼ばれ、両手で歩行器を持ちあげ、前方に置きながら進んでいきます。主に屋内で使用されます。

 

・使用に向いている人

手すりや歩行器に体重を預ければ、ゆっくりと歩くことができる人

 

■歩行器(交互型歩行器)

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左右のフレームを交互に動かして前に進みます。固定型歩行器よりも早く歩くことができます。こちらも固定型歩行器同様、屋内での使用が前提です。

 

・使用に向いている人

手すりや歩行器に体重を預ければ、ゆっくり歩くことができ、左右のフレームを交互に動かすこともできる人

 

 

■歩行車(前輪歩行車)

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前脚2脚だけに車輪が付いたタイプです。歩行する際は後脚を持ち上げて前輪を進めていきます。フレームに体重をかけることで後輪のストッパーを作動させることができるので、安定した歩行が可能です。歩行器よりも簡単に進める点がポイントです。

 

・使用に向いている人

歩行器を持ちあげて進むのが困難な人

 

 

■歩行車(四輪歩行車)

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4脚に車輪が付いているタイプです。四輪歩行器は持ち上げる必要がないため、前進や方向転換がスムーズに行えるのが大きな特徴。歩行の際は一度に進めすぎないようにすることがポイントです。

 

・使用に向いている人

歩行器を持ちあげて進むのが困難な人。屋外でも使用したい人。

 

 

歩行車とシルバーカーの違いってなに?

歩行車もシルバーカーも、歩行を補助する点においては同じ役割を担いますが、その特徴に大きな違いがあります。もっとも大きな違いが構造です。一般的な歩行車はハンドルがコの字型になっており、体重をかけることを想定したつくりになっていますが、シルバーカーはハンドルが真っすぐになっており、体重をかけるつくりにはなっていません。シルバーカーは荷物を収納したり、ときどき腰かけたりするのが主目的であるためです。

また、歩行車(歩行器も)は公的介護保険の対象になっていますが、シルバーカーは公的介護保険の対象ではないので注意が必要です。

 
 

 

現場の声・よくある失敗とその対策

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歩行器にはさまざまな種類や特徴があることは理解できたと思います。では、実際、どのような選び方をすればいいのでしょうか? ここでは実際の介護現場で起こった歩行器選定の失敗例を紹介し、その背景や対策を解説していきます。

 

【CASE1】

高齢者福祉施設で働くAさん(19歳)は、上司から「急に歩行器が必要になったから、早く揃えて! 至急ね!」と言われ、大急ぎで福祉用具専門店に発注。しかし、実際に届いた歩行器を使ってもらうと、利用者から「大きすぎて身長に合わない」、「ハンドルの形が持ちにくい」などの不満が続出! 購入した歩行器はほとんど使われず、倉庫で眠っています。

ポイント

このケースは歩行器のサイズや操作性が利用者に合わずに起きたトラブルです。Aさんは上司に急かされたことで「早く歩行器を注文しなきゃ」と焦ったのでしょう。歩行器のことをよく調べずに注文してしまい、失敗してしまいました。

歩行器は安い買い物ではありませんから、事前に利用者に試してもらい、購入を決めることをお勧めします。同じ体格や身長であっても、人によって使いやすいサイズやハンドル形状などがあります。また筋力や痛みの具合も個人差があるため、本人以外が想像だけで選ばないようにしてください。同じ施設内に既に歩行器がある場合は、それを使ってもらい、具体的な感想を聞くのが良いでしょう。まったくない場合は他施設から借りたり、レンタルを活用したりするのもお勧めです。

 

【CASE2】

主婦のHさん(56歳)は、義理の父(83歳)の歩行に不安を覚えていました。家の中で歩くときに、ときどきよろめいたり、壁に手をついて歩いたりすることが多くなったからです。そこで歩行器を購入しようと考えました。しかし、実際に購入してみたものの、歩行器を使うと家の中の廊下を通るのがギリギリで、あちこちにぶつかってしまうことが分かりました。義理の父も「これなら杖の方がマシ」と自分で杖を購入して使用する始末……。

ポイント

これもケース1と同様、利用者の声を聞かずに家族の判断で勝手に歩行器を購入してしまい、失敗した例です。それに加え、この場合は歩行器を使用する環境(自宅内)のことに無頓着でしたね。バリアフリーになっていない場合は、段差もありますので、そのような環境でも使いやすい歩行器選びが必要になります。また、使用する際、屋内がメインなのか、屋外がメインなのかも重要です。屋内であれば歩行器、屋外であれば歩行車という区別がありますが、実際に利用者に使ってもらって使いやすいものを選ぶのが大原則です。

 

【CASE3】

高齢者福祉施設で働く新米のFさん(18歳)は、担当の利用者が外へ散歩に行きたいと言うので、施設の庭で散歩に付き添うことにしました。しかし、いつも使っている屋外用の歩行車がありません。「屋内用があるから、これでいいか。少しだけだしね」と屋内用の歩行車を持ちだしました。利用者と一緒に外に出て、最初は自力で歩いていましたが、しばらくすると疲れたのが歩行車につかまることに。しかし、そこでアクシデントが! 屋内用の歩行車はブレーキがついていなかったため、利用者がつかまろうとすると、少し傾斜のついていた道路も相まってバランスを崩し、転倒しそうに。Fさんが慌てて支えたので事故にならずに済んだものの、転んでいたら利用者に骨折や捻挫をさせてしまうところでした。

ポイント

歩行器や歩行車は使用する環境によって機能性や安全性が考慮されています。今回の場合、屋外用の歩行車がなく、少しの時間ならいいかという油断が事故を引き起こしてしまいそうになりました。利用者の要望に応えたい気持ちはわかりますが、その前に歩行車の機能性や安全性を確認し、利用環境にあったものを使用するべきです。ブレーキが付いているか、利用者の体格にあったセッティングになっているかなどを事前に確認してから使用してください。

 

【CASE4】

在宅介護をしている男性Rさん(55歳)は、足腰が弱ってきた母親のためにシルバーカーを購入しようと考えました。というのも、友人から「シルバーカーも介護保険の対象になるらしいよ」という言葉を聞いたからです。しかし、購入後、ケアマネジャーに詳しく聞いてみると、シルバーカーは福祉用具ではないため、介護保険の対象にならないことが判明。Rさんは友人のうろ覚えな知識ではなく、専門的な知識を持っているケアマネジャーに事前に相談するべきだったと後悔しました。さらにケアマネジャーは「いきなり購入に踏み切るのではなく、まずレンタルで使い勝手を試してみるのがオススメですよ」とアドバイスされ、これから介護に関することは、まずケアマネジャーに相談しろうを心に誓いました。

ポイント

シルバーカーは歩行をサポートする福祉用具として多くの高齢者が利用しており、実生活でも目にする機会が多いと思います。しかし、シルバーカーは歩行補助用具とはいえ、あくまでも自力歩行が可能な方のための福祉用具であるため、介護保険費対象外。購入もレンタルも対象にはなりません。このように福祉用具でも介護保険の対象になるもの、ならないものがあります。少しでも迷ったらまずはケアマネジャーに相談してみましょう。

 
 
 

まとめ

歩行器は利用者の歩行を補助し、行動範囲を広げるばかりかQOLの向上、自分の足で自由に歩けることによる自信獲得など、さまざまな効果があります。しかし、利用者の体格や歩行器の使用環境、目的などが合っていないと、せっかく購入した歩行器も使われずに無駄になってしまいます。歩行器を導入する際は、まずケアマネジャーや福祉用具を専門とする相談員などに相談し、最適な歩行器を選ぶことが大切です。また、歩行器は実際に利用者が使ってみないと、その使い心地が分かりにくいもの。そのため、購入する前にレンタルし、試用してみるのも賢い方法です。

 

介護用品・福祉用具をレンタル(リース)でサポートします

日建リース工業は、介護現場に必要な介護用品・福祉用具を豊富に取り扱っており、ご利用者はもちろん、ご家族の方々にも喜んでいただけるケアレンタルサービスを提供しています。今回紹介した歩行器や歩行車をはじめ、専門知識を持った担当が多数在籍し、一人ひとりが福祉用具貸与事業者様、ケアマネジャー様への的確なアドバイスを行えるよう、日々知識の習得と向上に努めています。見積依頼も無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

よくある質問

歩行器はどんな人が使うもの?
歩行器は歩行に不安を感じ、転倒するリスクのある高齢者などが使用します。歩行器を使うことで、安定した歩行が可能になり、転倒防止、QOLの向上に役立ちます。
歩行車とシルバーカーはどう違う?
歩行車もシルバーカーも、歩行を補助する点においては同じ役割を担いますが、一般的な歩行車はハンドルがコの字型になっており、体重をかけることを想定したつくりになっています。一方、シルバーカーはハンドルが真っすぐになっており、体重をかけるつくりにはなっていません。また、歩行車(歩行器も)は公的介護保険の対象になっていますが、シルバーカーは公的介護保険の対象ではありません。
歩行器は屋外でも使える?
歩行器は一般的に固定型歩行器や交互型歩行器が多く、室内での使用を前提にした構造を持っています。そのため、屋外で使用する際は、歩行器ではなく、歩行車を選んだ方が良いでしょう。
歩行器は購入とレンタル、どちらが良い?
歩行器や歩行車を選ぶ上で、もっとも大切なのは、利用者にとって使いやすいものを選択すること。そのため利用者が実際に使ってみて、気に入ったものを購入するのがベストです。そう考えると最初はレンタルで使用感を試してみて、気に入れば購入に踏み切るといった流れが理想的です。
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