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ADL(日常生活動作)って? 意味や評価項目、ADL低下の予防方法を知り、介護状態の悪化を防ごう

介護業界でよく耳にする「ADL」という言葉。これは「Activities of Daily Living」の頭文字を取った略語ですが、具体的に何を指す言葉なのでしょう。ここではADLの意味やその項目などについて詳しく解説していきます。

ADL(日常生活動作)とは? 意味や役割について

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「ADL(Activities of Daily Living)」は日本語に訳すと「日常生活動作」のことを指し、日常生活を送るために最低限必要な動作を意味します。介護業界では、高齢者や障害者の方の身体能力や日常生活レベルを図るための重要な指標として用いられています。

日常生活動作とは、歩くことや階段の昇降、食事や排せつ行為、入浴、着替えなどが該当します。これらの動作ができるかどうかで、介護の可否を判断しています。

 

 

ADLの種類

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ADL(日常生活動作)には、基本的ADL(Basic ADL=BADL)と手段的ADL(Instrumental ADL=IADL)の2種類に分けられます。BADLは日常生活を送る際、必要最低限の動作がどれくらいできるかを示す指標。IADLはBADLができることに加えて、判断や意思決定などができるかを示す指標です。

一般的にはADLと言えば「BADL」のことを指し、IADLはBADLよりも高度で複雑な動作のことを指します。

ADL、BADL、IADLと3つも略語が出てきて、頭が混乱するかもしれません。下記に分かりやすく表にしてみましたので、それぞれの特徴を整理してみましょう。

BADLとIADL

 

ADLの評価項目

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ADLの評価を行う際にはいくつかの指標があり、それらを元に評価します。ここでは代表的な評価方法である「BI」と「FIM」について説明します。

 

BI(バーセル・インデックス)

BIは世界中で使われている評価方法で、日本の介護業界でも広く使用されています。BIの評価項目は10項目あり、4段階100点満点で評価します。点数が高いほど自立度が高いと評価されます。具体的な評価項目と判定基準は以下の通りです。

 

【評価項目 10項目】

  1. 食事
  2. 移動
  3. 整容
  4. トイレ
  5. 入浴
  6. 歩行
  7. 階段
  8. 着替え
  9. 排便コントロール
  10. 排尿コントロール

 

【判定基準 2~4段階】

  • 15点
  • 10点
  • 5点
  • 0点

FIM(機能的自立度評価法)

FIMは1983年に米国アメリカ医学会が既存のADL評価法では充分でないと考え、新たに作られた評価方法です。日常生活で実際に行う動作に則した評価項目になっており、運動項目13項目と認知項目5項目の合計18項目で評価します。各項目は1~7点の7段階で評価され、126点満点となっています。

 

【運動項目 13項目】

セルフケア

  1. 食事
  2. 整容
  3. 清拭
  4. 上半身更衣
  5. 下半身更衣
  6. トイレ動作

 

排泄コントロール

  1. 排尿コントロール
  2. 排便コントロール

 

移乗

  1. ベッド・椅子・車いす
  2. トイレ
  3. 浴槽・シャワー

 

移動

  1. 歩行・車いす
  2. 階段

 

【認知項目 5項目】

社会的認知

  1. 理解(聴覚・視覚)
  2. 表出(音声・非音声)

 

コミュニケーション

  1. 社会的交流
  2. 問題解決
  3. 記憶

 

【判定基準 7段階】

  • 完全自立:7点
  • 修正自立:6点
  • 監視・準備:5点
  • 最少介助:4点
  • 中等度介助:3点
  • 最大介助:2点
  • 全介助:1点

 

 

ADL低下の原因と影響

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ADL(日常生活動作)はIADL(基本的日常生活動作)の低下から始まって、次第にBADL(手段的日常生活動作)の低下が進行していき、その結果、生活の質的低下を招きます。もし低下した場合、日常生活にどのような影響があるのでしょうか。詳しく解説します。

 

 

■ADL低下の原因

・身体機能の衰え

ADLの最たるものが、老化による身体機能の衰えです。年齢を重ねれば、筋力が落ちて疲れやすくなり、外出や運動、家事をする機会も減少します。そうなると、さらに筋力が落ちるという悪循環になってしまいます。

 

・認知機能の衰え

計画的に物事を進められなくなったり、身体は動くものの、身体を動かす目的が分からなくなったりすると認知機能の衰えが疑われます。このようなことが多くなると、認知症と診断される可能性も高くなります。

 

・生活習慣病の発症

喫煙や運動不足、栄養バランスの悪い食生活を送り続けると、生活習慣病である高血圧や糖尿病を発症する危険性が高まります。これらの病気は日常生活が制限されることが多く、結果的に活動量が減り、ADL低下につながります。

 

 

■ADL低下の影響

①日常生活動作(ADL)が低下

上記で説明した身体機能や認知機能などの衰えによって、日常生活での活動量が減ります。

 

②活動量が減少して、社会参加の機会減少

活動量が減少すると人と接する機会も減り、自分の生きがいや役割を見いだせなくなります。そうなると生活への意欲も低下し、家に閉じこもりがちに。

 

③身体的・精神的にも機能が低下

やる気や意欲が低下すると、ますます外出をしなくなります。外出しなくなると、外部からの刺激も減り、精神的に塞ぎ込むようになります。

 

④自立度が下がり、介護が必要となる

心身ともに機能が低下するとADLの低下も著しくなり、無気力・無動作に陥ります。自立した行動ができなくなるので、介護が必要になる可能性が高まります。

 

⑤やがては寝たきりに

介護を受けてADLが回復すればよいですが、そのまま低下し続けるといずれは寝たきりになってしまう可能性があります。

 

 

ADL低下の予防方法

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生活の質を維持・向上するため、ADLが低下しないように予防する方法を説明します。

 

■ADL低下を予防する方法(一例)

・残存機能の活用

心身に残っている能力や機能のことを残存機能と言いますが、この残存機能をさらに低下させないことが大切です。基本は自分でできることは自分ですること。過度な介護は本人にとって良いことはありません。また、自宅にスロープや手すりをつけるなど、福祉用具などを活用するのも良いでしょう。

 

・バランスの良い食事

ADLの低下に関わらず、栄養バランスの取れた食事は、人が健康に生きていく上での基本です。バランスの良い食事は健康な身体を作り、生活習慣病の予防にも役立ちます。

 

・適度な運動

バランスの良い食事とともに大切なのは、適度な運動です。体力や筋力が低下すると、運動する意欲まで低下してしまいます。もっとも手軽な運動は「ウォーキング(散歩)」です。ウォーキングをする時間帯などを決め、習慣化すれば、継続しやすくなります。また、自発的に外出や運動がしたくなるような歩行器や歩行を補助する杖など、福祉用具を活用すれば、快適に運動をする手助けになります。

 

・生活環境の整備

自立した生活を継続してもらうためには、生活環境の整備も大切です。その中でも、もっとも効果的なのはリフォームです。玄関や浴室の段差をなくしたり、階段や廊下などに手すりを設置したりすれば、移動も容易になり、転倒によるケガの防止にも役立ちます。ただ、介護のためのリフォームや福祉用具は専門的な知識が必要。介護福祉の専門業者に相談しましょう。

 
 

まとめ

介護の現場では「生活を支援する」観点が重要です。そのためには、現状のADLを確認し、利用者がどのような生活を送れるようになりたいのか、一緒に目標を立てていくことが大切です。ADLの知識や評価の仕方、ADL低下を防ぐ方法などを学ぶことは、介護の現場で大きな力になるはずです。利用者の健康と自立した生活を取り戻すために役立てていきましょう。

 

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よくある質問

ADL(日常生活動作)とは?
「ADL(Activities of Daily Living)」は、日本語に訳すと「日常生活動作」のことを指し、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作を意味します。
ADDLにはどんな種類がある?
ADLには、基本的ADL(Basic ADL=BADL)と手段的ADL(Instrumental ADL=IADL)の2種類に分けられます。BADLは日常生活を送る際、必要最低限の動作がどれくらいできるかを示す指標。IADLは動作ができることに加えて、判断や意思決定などができるかを示す指標です。
ADL低下の原因と影響は?
ADLの低下は、身体機能や認知機能の衰え、生活習慣病の発症が大きな原因として挙げられます。また、これらが進行することによって、自立度が下がり、介護が必要となり、結果的に寝たきりになってしまう可能性が高いです。
ADL低下の予防方法は?
ADL低下を予防するためには、残存機能をさらに低下させないことやバランスの良い食事習慣、適度な運動を心掛けることが大切。また、本人が動きやすいような生活環境を整えることもADL(日常生活動作)低下を予防する効果的な方法です。
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