Nコラム
アセスメントシートとは、ケアマネジャーが利用者のケアプランを作成するときに使用するツールのこと。アセスメントシートには利用者がどのような背景を持ち、どのような支援を必要としているのかなどが具体的に書き込まれており、総合的な介護方針や適切な目標設定をするのに役立ちます。
アセスメントシートは利用者やその家族にヒアリングし、生活状況や健康状態、認知能力など23項目の内容を書き込んでいきます。ちなみに23項目は「基本情報に関する項目」と「課題分析に関する項目」に分けられます。ただ、アセスメントシートはあくまでもツールのひとつ。大切なのはこれらの情報を整理し、利用者の人物像や環境を把握することで適切な介護につなげることが目的であることを忘れてはいけません。
介護の現場ではアセスメントシートと同様のツールに「フェイスシート」があります。フェイスシートは利用者がどのような人物なのかを記録したプロフィールのようなものです。フェイスシートに定められた様式はありませんが、記載すべき項目は氏名、年齢、住所、家族構成など、ある程度決まっています。アセスメントシートとフェイスシートは混同しがちですが、アセスメントシートは最適なケアプランを作成・提供するためのシートなので目的が違うことを覚えておきましょう。
アセスメントシートには7つの様式があり、それぞれの様式ごとに特徴があります。厚生労働省の「平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成29年度調査)」によると、施設サービスでは「包括的自立支援プログラム方式」が、居宅介護支援事業所では「居宅サービス計画ガイドライン方式」が多く採用されています。提供するサービスや解決すべき課題に合わせて様式を選択しましょう。都道府県や事業所によっては、様式が指定されている場合もあります。
全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会、介護力強化病院連絡協議会の3つの団体が開発したものです。この様式は基本的な生活環境が整っている病院や施設に入所する被介護者に対し、質の高い自立支援や生活支援を提供するための方式として適していると評価されています。プログラムの内容は提供している介護サービスの分析を中心として、利用者が生活する上での課題を明らかにするもの。介護スタッフ間で共有しやすく、被介護者や家族にもわかりやすい様式と言われています。
全国社会福祉協議会が開発した方式で、エンパワメント支援の考え方が盛り込まれています。例えば、利用者の心や身体の強さを確認してケアプランに反映させることで、自分の課題を自分の能力で解決するための支援ができます。全国の居宅介護支援事業所の37.6%が採用している様式です。
在宅・施設のどちらの場合でも使用可能な様式です。特に在宅と施設を往来することが多い高齢者の情報を収集し、分析したいときの基準として高く評価されています。MDS-HC方式なら支援をする上で欠かせない「機能面」、「感覚面」、「精神面」、「健康問題」、「ケアの管理」、「失禁の管理」の6つの領域について把握することができます。
公益社団法人・全国老人保健施設協会が、介護老人保健施設でのケアのために開発した様式です。全国老人保健施設協会が持つ介護老人保健施設でのデータを統計学的に分析し、ICFという国際的な分類を用い、5段階の絶対値評価を行うのが特徴です。
調査分析の内容が広範囲であり、細部まで対応している様式です。この様式のアセスメントシートには「本人・家族等の意見・要望」や「アセスメント担当者が判断した課題」を記入するスペースがあるのが特徴。そのため、包括的なニーズを把握したいときに効果的です。
ホームヘルプの活動実績をもとにして作られたもので「衣・食・住」、「体の健康」、「家族関係」、「社会関係」の観点から高齢者の課題を分析していきます。そのため、要介護者の意思や価値観、思想、生活の環境などをより重視している特徴が見られます。
この様式は使用できる対象が広い点が特徴で、成人から高齢者までの幅広い年齢層に用いることができます。複数回の記入が行え、調査項目も細かいことから利用者のこれまでの経緯を確認しやすい良さがあります。ただ、調査項目が細かいため、アセスメントには時間を要します。
以上、アセスメントシートの代表的な様式7つを紹介しましたが、先に述べた必須項目(23項目)を満たしていれば、アセスメントシートを独自に作成することも可能です。
アセスメントシートに記入する際、最も大切にしたいのは、独りよがりな内容にしないこと。多職種との連携をスムーズにするために、記入者以外の人が見ても利用者の状況などが理解できるように書いてください。たとえば、5W1Hを意識することや、主観的事実と客観的事実を区別して書くことを意識すると良いでしょう。
利用者の氏名や性別、生年月日、住所などに加え、日常生活の自立度や認定情報、障害者手帳の有無などを記入します。障害者手帳がある場合は控えを取っておくと良いでしょう。すでに障害福祉サービスを利用しているのであれば、その利用計画を作成している相談支援事務所の職員とも連絡を取っておくとよりスムーズです。
衣食住に関わる日常生活をどの程度自分で行えるのか、さらに電話や買い物など、もう少しハイレベルな内容を自立して行えるのかなどを評価する内容です。こちらも利用者支援の基本とも言える部分になるため、利用者とコミュニケーションを取りつつ、ご家族の話も聞きながらしっかり評価しましょう。
アセスメントシートの記入例
●生活状況
・10年前まで●●市〇〇町の電気店の店主として働いていた。
・現在は妻と2人で暮らしており、ペットの犬が1匹いる
・趣味は犬の散歩。杖などを使わずに歩行できる
・認知機能がやや落ちており、70歳から服薬中
・入浴は体の前面は自分で洗えるが、背面は介助が必要
●主訴(利用者や家族の訴え)
・入浴はできる限り自分で行いたい(利用者)
・料理は好きなので、食事は自分で作りたい(利用者)
・薬の飲み忘れについて懸念がある(妻)
・好きな散歩は体のために続けてほしい(妻)
記入のポイント
利用者本人からヒアリングした内容を記入し、5W1Hを意識した書き方をすることで記入者以外が見ても分かるよう内容に。趣味などの必須項目以外の情報も記載するとより利用者を理解できます。
アセスメントシートはケアプラン作成やケアの提供にどのように役立っているのでしょうか。アセスメントシートを活用することで生まれるメリットや効果を列挙します。
アセスメントシートの活用で生まれるメリット
・利用者の健康状態や環境が変化した際、アセスメントシートに記録することでケアプランを迅速に調整できる
・利用者の介護に関わる関係各所との情報共有に用いられるため、介護の質を高めることができる
・訪問介護やデイサービス、リハビリや住宅改修など、その他サービスの利用状況や支援体制を知ることができる
・必要かつ適切な介護用品を選定し、必要に応じてレンタルをすることでコスト効率の良いケアを提供できる など
アセスメントシートの意味や作成方法、メリットなどを紹介してきましたが、読んでいただいた皆さんはアセスメントシートが介護の現場でどれだけ重要な役割を担っているのか、ご理解いただけたと思います。
アセスメントシートは利用者のニーズや状況を客観的に評価し、適切なケアプランを立案するための基本的なツール。正しく活用することで、利用者中心のケアプランの策定やサービスの質の向上につながります。作成する際は、ぜひ記事で紹介した内容を意識して記入してみてください。
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