Nコラム
介護を在宅でする場合、介護者は要介護者の面倒をみるために仕事を休んだり、時短勤務にしたり、介護用品を購入するなど、多くの負担を強いられます。それらの負担を金銭面から支援するのが補助金などの制度です。これらは国や地方自治体が取り決めており、自分で申請しなければ支給されないものもあります。そのため、まず制度をしっかりと理解する必要があります。
また、介護保険や医療保険も費用面で助けてくれる存在。社会全体で介護を支え合う相互扶助の考え方に基づいた制度です。このようにさまざまな支援制度が用意されているので、介護が必要になっても安心してください!
補助金や助成金、給付金は国や地方自治体・民間団体などから支出されるもので、原則的に返済不要です。それぞれの違いについてみていきましょう。
政策目的のために予算を組んで交付するもの。そのため、申請すれば誰でも受けられるとは限りません。
審査がなく、要件を満たせば受けられますが、要件が厳しいものは申請しても受けられない可能性があります。
事業主や個人に対して支給するもの。補助金や助成金は企業を対象としていますが、給付金は個人が申請できます。
2000年(平成12年)からスタートした制度で、皆さんが住んでいる市町村が運営しています。40歳になると被保険者として介護保険に加入し、その保険料が介護サービスに使われます。65歳以上の方で、市区町村(保険者)が実施する要介護認定において介護が必要と認定された場合、いつでもサービスを受けることができます。
介護で利用できる補助金や助成金、給付金には、どんな種類があるのでしょうか? その内容を紹介するとともに、給付条件、申請方法も説明していきます。なお、補助金などの制度は地方自治体によって違いがあり、法改正などによって給付条件が変更になる場合もあります。実際に給付を受ける場合は、お住まいの自治体にお問い合わせください。
介護保険サービスを利用せず、自宅で1年以上にわたり、要介護4~5に認定された要介護者を介護している家族に対して、自治体から年額10万円~12万円が支給される制度です。1回限りの支給ではなく、条件を満たせば毎年支給を受けることができます。しかし、給付条件がやや厳しく、実施していない自治体もあるので、お住まいの自治体に確認してみましょう。
【主な給付条件】
【申請方法】
家族介護慰労金支給申請書に内容を記載し、住民票、介護保険被保険者証の写し、所得課税証明書又は非課税証明書、介護者の名義の銀行や郵便貯金の通帳の写しを揃え、各地方自治体の窓口へ。
家族の介護のために仕事を休んで介護に従事する場合に認められ、休業中は給与の67%を受給することができます。給付条件を満たせば、最長93日を限度として3回まで支給されます。
【主な給付条件】
【申請方法】
要介護状態の家族がいる従業員から企業へ「育児・介護休業申請書(介護休業申出書)」を、介護休業取得予定日の2週間前までに提出してもらいます。給付金の申請は、企業が管轄のハローワークへ行います。企業は管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書」と「介護休業給付金支給申請書」を提出します。添付書類として、対象従業員の賃金台帳やタイムカード、従業員が提出した申出書、介護の対象となる者の証明書類、振込先通帳のコピーなどが必要です。
住宅を介護に適した状態に改修するための支援を介護保険から受けることができます。住宅の玄関、廊下、浴室、トイレなどに手すりをつけたり、段差をなくしたりする住宅改修が対象です。費用は、居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)として20万円を上限として給付されます。
【主な改修対象】
【申請方法】
改修工事前に、介護保険居宅介護/介護予防住宅改修費支給申請書(償還払い方式*1の場合)もしくは介護保険居宅介護/介護予防住宅改修費事前承認申請書(受領委任払い用、受領委任払い方式*2の場合)に必要内容を記入し、市町村窓口に申請。その他にも工事見積書や図面、改修前の状態が確認できる写真などが必要となります。
*1 改修工事を行った利用者が、いったん費用の全額を施工事業者に支払い、その後申請により費用の9割、8割または7割の支給を受ける方法
*2 利用者が費用の1割、2割または3割を施工事業者に支払い、費用の9割、8割または7割を市町村が施工事業者に直接支払う方法
介護保険サービスの事業者から腰掛け便座などの福祉用具を購入したとき、その費用の9割分(1割負担者)、8割分(2割負担者)または7割分(3割負担者)が支給される介護保険の制度です。利用限度額は、要支援・要介護度に関係なく、1年間で10万円です。
【主な支給条件】
【申請方法】
介護保険居宅介護/介護予防福祉用具購入費支給申請書の他、福祉用具を購入した際の領収書、購入した福祉用具のパンフレットなど用具の概要が記載された書類などが必要です。各市町村に申請します。
医療機関や薬局などの窓口で支払った医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合、その超えた金額が高額療養費として給付される制度です。医療保険加入者は誰でも利用することができます。
【対象となる医療費】
【申請方法】
加入している公的医療保険(健康保険組合、国民健康保険、後期高齢者医療制度など)に、高額療養費の支給申請書を提出することで支給が受けられます。病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
医療保険と介護保険における1年間(8月1日~翌年7月31日)の医療保険と、介護保険の自己負担の合算額が著しく高額であった場合、自己負担額を軽減する制度です。申請をすることで、負担額の一部が払い戻されます。
【主な支給条件】
【申請方法】
高額介護合算療養費等支給申請書に必要内容を記載し、市町村の窓口に申請します。保険証、預金通帳なども必要となります。
介護保険の自己負担額は所得に応じて1〜3割です。1割負担の方が1万円で訪問介護を利用した場合、自己負担額は1,000円で済みますが、日常的に介護保険サービスを利用していると、費用はどんどん嵩んでいきます。そこで、1ヶ月のサービス利用料の自己負担額の合計が高額になったとき適用されるのが、この制度です。個人の所得や世帯の所得によって決まる月々の負担額上限を超えた金額が、介護保険から支給されます。
【対象となる主な介護保険サービス】
【申請方法】
介護保険サービスの利用料が自己負担額限度額を超えた場合、各市町村から通知が来ます。その通知に従って、速やかに申請しましょう。
介護用品や福祉用具は、要介護者の状態によって選ぶものが変わってくるので、レンタルサービスを利用するのが基本です。補助金(介護保険)は用品・用具のレンタルサービスにも利用することができるので、積極的に活用しましょう。ただ、要介護者の身体に直接触れるものや、排せつに関するもの、衛生面や心理面でレンタルに馴染まないものもあるので、そのようなアイテムは購入したほうがいいでしょう。もちろん、その際にも補助金や介護保険が使えるものもあるので、ケアマネージャーさんなどに相談してみましょう。
介護に関する補助金などの制度は多種多様で、給付を受けられる条件や申請方法もさまざまです。また、地方自治体によっても条件や申請方法が異なることもあります。そのため、介護が必要になったときはまず、住んでいる市町村にどんな制度があるのか、どのように申請すればいいのかを問い合わせ、知っておくことが大切です。せっかくいろいろな支援制度があるのだから、積極的に活用しましょう。
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